以前に、書いたエッセイから、再掲載です。
1992年頃の話ですが、サラリーマン時代、会社の研修で、とても、ためになる話を、聴きました。
いろいろな研修を、受けましたが、この研修が、とても、心に、残っています。
その研修の内容は、「ビジネス」だったのですが、その講師が、こう言ったのです。
「いいですか、皆さん。これからの時代のビジネスは、サイレントになってきますよ」
口の前に、人差し指を、立てて、
「シーッ」
というポーズをしながら、開口一番、こう言いました。
どういうことかというと、今後、ビジネスの業界は、もちろん、社会全体が、どんどん、「サイレント」の方向に、向かっていくと、言ったのです。
つまり、「クレーマー」が、どんどん、少なくなっていくということです。
クレーム(苦情)が、少しづつ、社会から、なくなっていくという意味でした。
これは、「親切な社会」という、いい意味ではなく、「不親切な社会」という悪い意味で、言っていました。
昔は、お店などに、お客さんが、来た場合、サービスが、悪かったり、製品が、気に入らなかったら、その場で、怒ったり、文句を言ったりしたものですが、これからは、だんだんと、そういうお客さんは、少なくなってくるという話でした。
そのかわり、何も、言わずに、無言で、スーッと、立ち去っていくお客さんばかりに、なってくると、言っていました。
無言の抗議、つまり、
「再び、そのお店には、来ない」
というだけの話に、なってくるのだと、言っていました。
これは、ある意味で、怖い社会です。
まだ、お客さんが、クレームをつけてくれれば、反省して、それを、改善して、立ち直ることもできます。
しかし、サイレントだと、無言で、一言も、発せずに、帰っていった場合、お店は、
「いったい、自分たちのどこが、悪かったのか?」
という反省が、できません。
だから、少しづつ、売り上げが、落ちてきて、気が付いたら、赤字になり、お店が、つぶれるという結果に、なるのです。
それは、ある程度、社会が、成熟したからでもあります。
つまり、発展途上国のレストランなどに行くと、いまだに、コップを、ゴン!と、勢いよく置かれたり、お釣りを、間違えられたり、酷いサービスを、経験することもあるでしょうが、日本などの、先進国では、頭に、カーッと、血が上るほどの無礼なサービスには、あまり、遭遇しないのです。
そのかわり、
「なんとなく、今の店員さん、感じが悪いな…。次からは、もう、この店には、来たくないな…」
などと、なんとなく、ボンヤリとした不快感を、感じることのほうが、多いのです。
人間関係においては、喧嘩になったり、嫌ったり、嫌われたりする場合、現代では、あまり、わかりやすい「悪」という行為は、ありません。
つまり、「ナイフで、人を刺す」という行為や「顔を、ぶん殴る」だとか、「唾を、吐きかける」とか、そういうことで、喧嘩や仲たがいをすることは、あまりないのです。
99%以上の喧嘩や仲たがいは、
「なんとなく…」
という理由ばかりなのです。
わかりやすく言うと、
「こういうことは、いちいち、相手に、言うほどのことではないな…」
という理由で、人間関係は、壊れることが、圧倒的に、多いのです。
その会社の研修を、受けてから、そういう視点で、会社生活を、眺めてみると、いろいろなことに、気が付きました。
たとえば、同じ会社に、50歳くらいの先輩が、いたのですが、この先輩は、性格が、とってもよく、仕事も、真面目にやるのですが、周囲から、思いっきり、馬鹿にされていました。
そして、よく、人間関係のトラブルを、起こしていました。
もちろん、出世など、できそうにないタイプでした。
「どうして、この先輩は、こんなに、皆から、馬鹿にされるんだろう?」
と不思議に、思っていたのですが、だんだん、理由が、わかってきました。
その先輩の悪い癖だと、思うのですが、トイレに行って、でてきた時に、ズボンのチャックが、1.5センチほど、よく空いているのです。
1センチだと、あまり、気になりません。
また、2センチだと、周囲も、
「空いてますよ」
と、注意をすると、思いますが、ちょうど、1.5センチという微妙な長さが、空いているのです。
だから、自分も含めて、周囲の人たちは、
「この人、また、チャックが、空いているな…。どうしようかな? 注意してあげようかな? でも、まあ、まだ、それほど、空いているわけではないから、とりあえず、黙っているか…。そのうち、自分でも、気がつくだろう…」
と思ってしまうのでした。
そして、会うたびに、よく、空いているものだから、どうしても、
「この人、馬鹿だな…」
と思っていまうのです。
申し訳ないけど、本当に、そう思うのです。
でも、この思いも、やはり、
「これも、いちいち、口にだすほどのことではない」
と思っていました。
このように、ビジネスだけでなく、日常生活においても、人が、人を嫌ったり、馬鹿にしたりすることのほとんどが、
「いちいち、言うほどのことではない」
という言葉や行為ばかりなのです。
精神世界の業界では、よく、
「アリガトウなどの感謝の言葉を、口に出すことが大事。そうすれば、自分の周囲が、天国になる」
だとか、逆の
「バカヤロウなどの愚痴や悪口の言葉を、口に出さないことが大事。その言葉は、自分の周囲を、地獄にする」
という教えが、説かれることが、多いです。
でも、こういうことよりも、もっと、気をつけなくては、いけないことがあります。
それは、
「自分では、あまり、意識しないような、少しネガティブな言葉。周囲も、いちいち注意しない程度の悪い言葉を、口から、出さないようにする。また、そういう行為も、やらないようにする」
ということです。
思い浮かぶ言葉や行為を、具体的に、例を、あげてみましょう。
「NGワード」や「NG行為」ですね。
○会話が、終わった後に、その会話の相手の話の内容に対して、
「くだらない」
「つまらない」
と、言ってしまう。
これは、場合によっては、1回やっただけで、おしまいのことも、多いです。
数回やったら、アウトです。
こういう言葉を、言われた人は、もう、二度と、その言った人を、食事などに、誘うことは、ないと思います。
○会話で、相手の話が、始まったとたんに、
「そればっかし!」
「また、そのはなし~?」
「その話、聞くの100回目、あはは」
とか、言う。
これも、いちいち、腹を立てるほどのことでは、ありませんが、言われた人は、もう、他の話題に、代えようとは、思いません。
また、言われるかもしれないからです。
ほとんどの人が、
「用事を、思い出した」
とか言って、黙って、帰るでしょう。
言った人は、どうして、その人が、急に、帰ったのかも、わからないことが、多いみたいです。
○会話の途中で、
「要するに、こういうことでしょう?」
と、話が、終わってもいないのに、先に、結論を、言ってしまう。
だいたい、こういう結論を、先に言う人に限って、実は、その結論が、外れているのですが、自分では、頭の回転が速いことが、アピールできたと、思っています。
これも、程度の問題ですが、頻繁に、やりすぎると、次回から、食事などに、誘ってもらえなくなります。
○皆で、レストランなどで、楽しく話をしている最中に、携帯メールを、頻繁に、チェックしたり、電話を、かけたりする。
これも、嫌がられます。
人数が、5人の場合、おそらく、次回、ドライブなどに、皆で行く時に、車が、1台しか用意できなくて、4人しか、乗れない場合、この人物が、自然に、誘われなくなると、思います。
もちろん、理由は、
「なんとなく…」
です。
いちいち、怒ったり、注意してくれる人は、いません。
○レストランなどで、皆で、真剣に、ある問題の核心について、語っている最中に、いきなり、メニューを、持ち上げて、追加注文を、とろうとしたり、あくびをしたり、その場のリーダーが、真剣に、話を始めた途端に、トイレに、行ったりする。
これも、いちいち、注意する人は、いません。
皆、
「この人、なんとなく、空気が、読めない人だったんだな…」
と、思うだけで、おしまいです。
もちろん、次回から、声も、かからなくなります。
○頻繁に、遅刻する。遅刻する時も、連絡をすれば、いいのですが、まったく、連絡をしなかったり、謝らなかったりする。
連絡する時も、ただ、単に、
「遅れます」
だけだったりする。
親切な人は、ちゃんと、
「あと、10分くらい遅れます」
と、到着予定時間を、教えてくれます。
こうやって、時間を、言ってくれると、スケジュールが、立てやすくなります。
言わないと、けっこう、皆が、ストレスを、感じます。
ただ、こういうことも、丁寧に、教えてくれる人は、まずいません。
他にも、たくさんあるのですが、まあ、これくらいに、しておきましょう。
ただ、これらは、問題が、わかっても、すぐには、なおせません。
子供の頃からの、数十年間の積み重ねで、そうなったからです。
だから、家庭環境の問題が、大きいのですが、なかなか、修正は、難しいです。
もうひとつだけ、例を、あげますね。
あるビジネスセミナーで、聴いた話です。
実際に、よくある話だそうです。
例えば、大企業などが、派遣社員を、100人くらい、雇っているとします。
そして、3ヶ月間の間に、皆の仕事ぶりを、その会社の部長さんが、みています。
そして、全員に、コピーを取る仕事をさせます。
その時、よく、あることですが、パソコンから、印刷すると、コピーの用紙が、2枚になることがあります。
そして、2枚目の用紙に、1行だけ、文章が、印刷されます。
その文章も、
「ました。」
のように、4文字だけが、印刷されることが、よくあります。
その時に、ほとんどの人、だいたい、100人中、99人の人は、
「ああ。4文字、余って、2枚になってしまった…。まあ、いいか…。いちいち、修正するのも、めんどうだから、そのまま、コピーして、部長のところに、提出しよう」
と思います。
そして、提出してしまうのです。
でも、100人中、1人くらいは、
「用紙が、もったいないから、この4文字を、切り貼りして、1枚にしよう。もしくは、縮小コピーして、なんとか、1枚にまとめて、部長に、提出しよう」
と思って、提出します。
そして、3ヶ月後に、
「君、いい仕事ぶりだね。ところで、わが社の正社員に、ならないかね?」
と声が、かかるのは、このコピーを、1枚に、まとめた、100人中の1人に、なるそうです。
考えてみれば、
「たかが、用紙1枚」
ですが、この大企業が、30万人くらいの大企業で、子会社なども含めて、全グループ企業に、このコピーを、配ろうとしたら、この1枚が、物凄いコストになります。
大げさな言い方をすれば、何回も、こういうことを、やったら、地球環境にも、悪影響を与えます。
だから、大企業としては、こういう丁寧に、工夫して、コピーを取る人を、
「正社員にしたい」
と、考えているのです。
でも、これも、いちいち、
「君のコピーの取り方が、うまかったので、採用を、決めたんですよ」
などとは、教えてくれません。
もちろん、そのまま、採用しなかった、残りの99人にも、いちいち、
「どうして、採用しなかったのか? それは、コピーの取り方が、いい加減だったからですよ」
なんて、理由は、説明しません。
そうやって、たったのコピー1枚で、年収が、300万円の人と1000万円の人に、分かれているというのが、現在の格差社会の大きな要因の一つらしいのです。
だから、総理大臣や政府の悪口を言うのも、いいのですが、なかなか、就職や転職、出世が、思ったようにいかない人は、一度、こういう観点から、自分自身や社会を、考えてみると、いいと思います。
これからも、しばらくは、この「サイレント」の現象は、続くと思います。
人々が、怒りや憤り、不満などを、口に出さなくなっていくのです。
そして、何も言わずに、スーッと、引いていき、2度と誘ってもらえなくなる。
こういう人が、今でも、そして、これからも、どんどん、増えていくと思います。
ビジネスシーンは、もちろん、友人関係や恋愛、結婚でも、そうだと思います。
そういう状況の中で、
「では、どうするか?」
ですね。
すでに、気がついている人も、多いと思いますが、上記の思いやりがなく、想像力に欠け、空気が読めずに、「NGワード」や「NG行為」を、頻繁に、繰り返し、友人が、スーッと引いていったのは、若い頃の私が、モデルです。
よく、こういうことをやって、大ひんしゅくを、買っていました。
さらに、そのことにも、なかなか、気がつかないという状態でした。(苦笑)
まあ、今でも、たまにやりますが、若い頃に比べたら、少しは、マシになっています。
それは、いろいろなキッカケで、気がついたのですが、
「すこしづつ、自分のこういうところを、なおしたい…」
と思ってからは、謙虚になって、親しい友人に、勇気をもって、聞くことにしました。
その時、こういう聞き方を、していました。
「ねえ、自分の悪いところ、欠点って、どういうところだと思う? 絶対怒らないから、教えてくれない? 自分の長所や短所って、自分では、なかなか、わからないんだよね。特に、短所は。その中でも、微妙に、周囲を、不愉快にしている癖って、あるよね。ちょっと、教えて。ただ、自分は、けっこう、気が弱くて、傷つきやすいから、お手柔らかに、やさしく、言葉を選んで、教えてね」
最後の部分は、特に、大事です。
人によっては、本当に、グサッと、心に、突き刺さる指摘を、する人もいるから、注意が必要です。
「本当のこと」ほど、人を、傷つけるものは、ないからです。
自分の短所に、気がついたら、年齢が、若いうちは、なるべく、がんばって、なおすようにしたら、いいと思います。
ただ、ある程度、年齢を重ねて、
「あまり、自己改造をすることは、難しい」
と感じたら、その時は、短所を、なおすよりも、長所を、伸ばすことを、考えたほうが、うまくいきます。
自己改造には、大きく分けて、
「短所是正法」
「長所進展法」
の二つが、あるのですが、年齢を、重ねるごとに、だんだん、後者のほうが、効果が、期待できるように、なってきます。
人に、聞いてみると、自分でも、気がつかなかった、意外な短所に、たくさん、気がつくかもしれませんよ。
「挨拶をしない」
「髪型が、微妙に変」
「食べ方が、微妙に下品」
「香水のにおいが、きつい」
「ネクタイのセンスが、悪い」
「眼鏡が、いつも、汚れている」
「貧乏ゆすりを、する」
「いびきが、うるさい」
などなど。
今まで、無言で、スーッと、引いていた人たちの無言の抗議、「サイレント」の中に、もしかしたら、幸せになれる宝物が、たくさん、隠れているかもしれませんよ。
ただ、何度もいいますが、聞く人は、心のやさしい人を、選んでくださいね。(笑)
人間は、どんな人も、皆、傷ついたり、傷つけられたりしながら、学んでいる、「人生道場」の中の門下生同士だと、思います。
遠慮しないで、お互いに、やさしく、教えあえたらいいですね。
PS 人間関係において、トラブルが、起こっても、だんだん、「サイレント」で、解決しようという流れに、なってきています。
相手の気持ちを、「察する」という能力が、これからは、とても、求められています。
「いつのまにか、嫌われ者に、なっていた…」
という場合は、ほとんどが、「どうでもいい、小さいこと」が、積み重なっているのです。
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