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アローズ・ジレンマ

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昨日、従業員の女の子と、ランチをしていたら、話題が、「選挙」になりました。

その話の流れから、

「そもそも、この世界は、どういう構造に、なっているのか?」

という話を、紙に書いて、いろいろ説明したら、

「トーマさん、この話、とっても、面白いから、ブログに、書いたらいいですよ!」

と、その子に、アドバイスされたので、書きますね。




選挙には、不正やインチキは、必ずあるものですが、ここ数年、特に酷くなっています。

それを、わかった上で、

「では、全ての不正が、なくなって、国民の全てが、正しく合理的な判断をすれば、政治や世の中は、よくなるのか?」

という疑問が、でてきます。

結論から言うと、

「わからない」

ということです。

もっと、簡単に言うと、

「よくなるかもしれないし、ならないかもしれない」

というあやふやな結論に、なってしまうというのが、私の考えです。

なぜかというと、人間の社会は、もっと、複雑だからです。



「皆で、祈れば、世界は、変わる。全員が、力を合わせれば、不可能はない」

精神世界では、よく、こういう話を聞きます。

アメリカの数学者、ケネス・ヨセフ・アローという人物が、40年ほど前に、大変興味深いことを、発見しました。

私は、この発見を、大学生時代、22歳の頃に、ある本で、知りましたが、衝撃でした。



昔から、経済学という学問の中で、議論されたことで、

「社会は、個人の意識の集合体なのか? それとも、全く別の生命体で、別の意識をもった集合体なのか?」

という問題が、ありました。

例えば、学者の中には、

「個人にとっては、良いことでも、社会全体にとっては、悪いことなど、たくさんある。例えば、貯蓄は、個人にとっては、良いことだが、社会の全員が、貯蓄を、始めると、経済が、停滞してしまう。だから、個人の問題と社会全体の問題は、全く別次元の問題だと、考えなくてはいけない」

こう言う意見を、述べる人たちがいて、長いことこの「個人」と「社会」の意識については、謎のままでした。

この問題に、一石を投じたのが、アロー博士でした。

これは、「アローの背理(アローズ・ジレンマ)」と呼ばれているようです。

アロー博士は、アメリカで、サミュエルソン博士と並ぶ、経済学者でもあるのですが、1972年に、これの発見により、経済学の部門で、「ノーベル賞」を、受賞しています。

以下が、それです。



仮に、3人の人間が、いたとします。

「太郎君」、「次郎君」、「三郎君」とします。


さらに、仮に、Aを「自民党」、Bを「民主党」、Cを「共産党」とします。


太郎君の頭の中では、彼は、こういう優先順位で、この問題を考えました。

A>B、B>C → A>C 


次郎君は、こういう優先順位でした。

B>C、C>A → B>A


三郎君は、こういう優先順位でした。

C>A、A>B → C>B


ここで、3人は、合理的に矛盾なく、物事を考えています。

ここまで、いいですね?


さて、全体の問題に、目を向けてみましょう。

AとBについて、見てみます。

太郎君は、A>B だと思っていて、次郎君は、B>A です。

三郎君は、A>B だと思っています。

これをまとめると、Aの方がいいと思う人、二人、Bがいいと思う人、一人で、

A>Bです。


BとCについて、見てみます。

太郎君は、B>C だと思っていて、次郎君も、B>C です。

三郎君は、C>B だと思っています。

これをまとめると、Bの方がいいと思う人、二人、Cがいいと思う人、一人で、

B>Cです。


AとCについて、見てみます。

太郎君は、A>C だと思っていて、次郎君は、C>A です。

三郎君も、C>A だと思っています。

これをまとめると、Cの方がいいと思う人、二人、Aがいいと思う人、一人で、

C>Aです。


そして、この「AとB」、「BとC」、「AとC」の3つをさらに、まとめると、

A>B、B>C、C>Aです。


従って結果は、

C>A>B>C (共産党>自民党>民主党>共産党)

となります。


数学的に、不合理で矛盾したものです。

これを、知った時、とても、驚きました。

太郎君、次郎君、三郎君は、3人とも、合理的な判断をしているのですが、この3人の創りだした、集合意識は、まったく、独自の考えをする、別の意識体に、なっているということです。



上記の組み合わせは、絶対ではなく、組み合わせによっては、結果が、合理的なものになることのほうが、多いです。

ご自分で、紙などに書いて、確認してみてください。

単純な証明ですが、凄いものです。

上記は、3人だけの人数で、しかも、合理的な判断をするという前提条件でさえ、こういう不合理な結果になることもあるのです。

それだったら、現実の社会で、何千万人という人が、様々な思惑で、たくさんの政党に、投票する選挙などは、どういう結果になるかを、予測するのは、とっても、難しいということです。



身近な例をあげると、一人一人は、とても良い人なのに、その集団の全体では、わけのわからない行動を、起こしたり、嫌な雰囲気を、醸し出していることなど、よくありますよね?

簡単に言うと、これは、そういうことです。



この証明は、前述した、

「皆で、祈れば、世界は、変わる。全員が、力を合わせれば、不可能はない」

という意見を、否定するものではなくて、

反例を、一つだけあげるだけで、

「必ずしも、そうではないのだ」

ということを、証明したものです。



それまでの常識である、

「全員が、合理的な判断をすれば、世の中は、よくなる」

という認識が、

「必ずしも、そうなるとは、限らない。全員が、合理的な判断をしても、世の中は、不合理な判断をして、悪くなることもある」

という認識に、変わったのです。

これは、逆もあります。

「全員が、不合理的な判断をしても、世の中は、合理的な判断をして、良くなることもある」

ということです。

世界というものは、人間が、考えている以上に、もっと複雑みたいです。

これは、拡大解釈すると、

「世界中の全ての人が、世界平和の祈りをやっても、世界全体は、平和になるかもしれないし、ならないかもしれない」

ということなのです。




精神世界では、「潜在意識」や「無意識」という単語を、はじめとして、「ハイアーセルフ」や「オーバーソウル」、さらに、「守護霊」や「ガイド」など、目に見えない存在について、たくさんのことが、語られますが、上記のような複数の人間の意識が、組み合わさったような「意識体」や「集合無意識」については、深く考察されることは、少ないようです。

私が、22歳の時に、この「アローズ・ジレンマ」を、知ってから、25年の歳月が、経っていますが、いまだに、この謎は、解明されないままです。

この世界は、まだまだ、わからないことだらけなのです。

だから、面白いのです!(笑)






PS 先日、有楽町の街を、散歩していたら、氷が、置いてありました。

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