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水木しげるさん

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先月、都内の電車に乗っていたら、電車内のテレビで、水木しげるさんの訃報を知りました。

また一人、偉大な方が、光の世界に旅立ったのですね。




子供の頃、「ゲゲゲの鬼太郎」が、大好きでした。

当時、お化けが怖くて、トイレに一人で入るのが、とても苦手だったのですが、

「ゲッ、ゲッ、ゲゲゲのゲ~♪」

と、鬼太郎の主題歌を歌うと、なぜか、気持ちが楽になり、お化けが怖くなくなることがわかり、よく鼻歌で、この歌を歌っていました。



どこかで、聞いた話ですが、

「名前のついたお化けは、もう怖くない」

という考え方が、あるそうです。

これは、

「人間の恐怖の根源は、正体がわからないことである」

という意味だそうです。

つまり、何事も、

「それが、得体の知れないもの」

だから、怖いということです。

これが、具体的に、

「このお化けは、こういう顔で、身長と体重が、このくらいで、こういう性格で、人間に近づいてくるのは、こういう目的があるからです」

と、教えてもらえれば、怖くなくなるのです。


「底なし沼」というのが怖いのは、どれくらいの深さか、わからないからです。

「5メートルなのかな? 10メートルなのかな? もしかして、100メートルくらいの深さかな?」

なんて考えるから、どんどん恐怖心が、増幅するのです。

これが、

「この底なし沼の深さは、13メートル48センチです」

と、正確な深さを教えてもらえれば、それほど、怖くなくなるのです。

案外、「底なし沼」だと思って、怖がっていた沼の深さが、2メートルくらいかもしれないのです。(笑)




妖怪の伝説は、昔から、日本各地にあります。

私は、個人的には、どの妖怪も、実在していたと考えています。

「パラレルワールド」などの異次元空間は、人間の集合無意識で創られている生命体が、山ほどいるという話も、よく聞きます。

だから、どんな姿をした生命体も、必要に応じて、私たちの現実世界に、出現することもあるだろうと思います。



何かの本で、読んだのですが、「妖怪」というのは、民俗学的にみると、日本の社会において、とても重要な働きをしていたそうです。

たとえば、現在と違って、昔は、長屋だったりして、隣近所が、くっついたような家屋が、多かったのですが、夜中に、ちょっと物音がした時に、お母さんが、子供たちに、

「今の物音は、○○○○という妖怪が、転んだ音だよ」

「あの足音は、××××という妖怪だよ」

と、言ったりしたそうです。

これは、どうして、そういうことを言ったかというと、隣近所との無用なトラブルを、避けるためだったそうです。

つまり、人間以外の「悪者」を、つくることによって、お互いが、ギスギスした関係にならないような「潤滑油」の働きをしたのだそうです。


現代は、「妖怪」の話をしなくなったために、アパートの隣人同士が、夜中に、ちょっと物音を立てただけで、訴訟さわぎになったり、裁判になったりします。

酷い時には、殺人事件にまで、発展したりします。

そう考えると、現代こそ、「妖怪伝説」が、必要な世の中なのかもしれません。

皆が、目に見えない世界を信じないで、目に見える世界だけを見ると、世の中は、おかしくなるのかもしれませんね。




水木さんは、戦場を経験した方でもありますが、何かの雑誌のインタビューの時に、

「当時の常識では、勇敢な男性が、男らしくて、カッコイイと思われていました。でも、そういう男たちは、例外なく、勇ましく最前線で、突撃していき、無駄死にしていました。私は、臆病で、勇気がなく、ダメな兵隊でした。でも、だから、助かったのです。常識なんて、時代によって、いつ、どう変わるかわからないものですよ」

と、語っていたのが、とても印象に残っています。




「水木しげるさんの名言集」があったので、紹介しますね。



※※※※※※※※※※※※※※※



「水木しげるさんの名言集」



幸福の七ヶ条

第一条 成功や栄誉や勝ち負けを目的に、ことを行ってはいけない。
第二条 しないではいられないことをし続けなさい。
第三条 他人との比較ではない、あくまで自分の楽しさを追及すべし。
第四条 好きの力を信じる。
第五条 才能と収入は別、努力は人を裏切ると心得よ。
第六条 怠け者になりなさい。
第七条 目に見えない世界を信じる。

覚書き|「水木さんの幸福論(日本経済新聞社)」より。
水木氏は幸福な人、不幸な人を観察して、幸福になるにはどうすればいいか伝える幸福観察学会を、設立している。
もちろんいかがわしい団体ではなく、会員は水木氏本人のみであり、増やす予定はないとのこと。



私は片腕がなくても他人の3倍は仕事をしてきた。もし両腕があったら、他人の6倍は働けただろう。命を失うより片腕をなくしても生きている方が価値がある。



私が幸福だと言われるのは、長生きして、勲章をもらって、エラクなったからではありません。好きな道で60年以上も奮闘して、ついに食いきったからです。ノーベル賞をもらうより、そのことの方が幸せと言えるでしょう。



不幸な顔をした人たちは、「成功しなかったら、人生はおしまい」と決め込んでいるのかもしれないね。成功しなくてもいいんです。全身全霊で打込めることを探しなさい。



私は得な性分で、つらかったことは忘れ、楽しかったことだけを覚えている。



他人の思惑などに振り回されず、自分のやりたいように生きる。外の世界にいちいち対応せず、自分の世界の流儀でやればいい。



熱中する能力、いわば「好き」の力ほど、人生を生きていくうえで大事なものはないような気がする。



私は「奇人は貴人」だと考えているから、漫画にも大勢の奇人変人を描いています。こうした人たちには、好奇心の塊のような、我が道を狂信的なまでに追求している人が多い。つまり、誰が何と言おうと、強い気持ちで、我がままに自分の楽しみを追い求めているのです。だから幸せなのです。さあ、あなたも奇人変人になりなさい。



私には驚く力が常人の十倍ぐらいありました。81歳を超えたいまでも、「フハッ!」と驚くことが1日に何度もあるのです。こうした能力は勉強しても伸びない。才能なんです。



悲壮な顔をした人たちは、成功や栄誉や勝ち負けにこだわってばかりで、仕事でも趣味でも恋愛でも、熱中することを忘れてしまったんじゃないですか!好きなことに没頭する、そのこと自体が幸せなはずなのに……。もちろん、成功することに越したことはないが、成功できるかどうかは時の運です。



栄光や評価など求めず、大好きなことに熱中する。それ自体が喜びであり、幸せなんです。私の場合、それは漫画を描くことだった。その行為が金銭的に報われるほうがいいに決まっているが、結果の良し悪しには運が付きまとう。



好きなことにのめり込み、才能が開花してどんどん伸びたとする。でも、食べていくのは大変だ。なかなか儲かるもんじゃない。努力に見合うマネーはなかなか得られないもんです。だからといって、絶望したり、悲観したり、愚痴をこぼしてはいけない。ただただ、努力するのです。なにしろ、好きな道なんだから。



絵が上手いとか、駆けっこが速いとか、泳ぎが上手いとか、勉強が駄目でもいいところを見つけて褒めてくれたり、伸ばそうとして励ましてくれたり、思えば優れた教師たちがいました。



アホなベビイ(子供)という評判は気にならんかったのです。私は世の中の法律とは別の法律にのっとって生きてたわけです。



「楽をして、ぐうたらに生きる」が私の座右の銘で、60歳を超えてから何度も南洋の村に永住しようと本気で考えた。だがその都度、妻子の猛反対にあって断念した。世俗の仕事に追いまくられ、「人生思い通りには運ばない」とボヤいていたが、このごろは生涯現役も悪くはないのかなあという心境になってきた。どうやら、勤勉な妖怪が私に乗り移っているらしく、死ぬまで忙しそうだ。



私が40歳を過ぎてようやく売れだしたころ、手塚(治虫)さんはすでに押しも押されもせぬ漫画界の重鎮で、スーパースターだった。だから、そのころの手塚さんは売りだしたばかりの中年漫画家のことなんかあまり意識していなかっただろう。だが、私は手塚さんを「ライバル」だと思ってやってきた。



強いだけ、威張るだけではガキ大将の座は安泰ではない。ある程度みんなの自由を認め、楽しく愉快に遊ばせる知恵や工夫がないと、人心を掌握できない。それができると、まとまりができて、合戦などのときに強みを発揮する。



世の常識を授けてくれる学校は大事な場所だ。しかし、学校の成績は下がるかもしれないけれども、興味を持ったり、心を動かされたりしたことは、周りからどんなにくだらないと言われても、とことん突き詰めるのは本当にいいことだ。



我が人生は半分寝ぼけたようなことの繰り返しで、パッとした出来事や思い出はあまりない。うまい話や儲け話とも縁が薄かった。それでも、自分がつくったルールに忠実に、マイペースで生きてきた。でこぼこ道や回り道が多かったものの、画業という好きな道を半世紀以上にわたってずっと歩いてくることができた。その意味では、とても幸せな人生なのかもしれない。



まだ現役の漫画家である。バリバリとまではいかないが、ぼちぼちと仕事をしている。創作意欲とか、何を描きたいとか、そういう次元を超越してしまって、無意識のうちに描いている気がする。妖怪か背後霊のようなものが私にとりついて、描け描けと背中を押しているのかもしれないと思うほどだ。70歳をすぎたら悠悠自適でのんびり暮らす予定だったのに、いまでも結構忙しいのは、やはり憑き物が憑いているとしか思えない。でも、それは苦痛ではなく、幸いなことに楽しく、充実感があって愉快なのである。



幸福を手に入れるのは実に大変だが、しかし大切なのはその人の生き方次第というわけです。



若いときは怠けては駄目です!でも、中年を過ぎたら愉快に怠けるクセをつけるべきです。なんとか食えるようになってから、連載の本数を減らして、世界中の楽園や妖怪の棲み処(すみか)を訪ねる世界妖怪紀行を始めました。いままでに78回も世界中を旅していて、これが私の最大の怠け術です。ときどき怠けることは生きていくうえで大切なことです。そして、仕事でも役立つのです。



同業者の家に行くと、本なんか一冊もない人たちが少なくありませんでした。面白おかしく、楽しみながら好きな漫画を描いて、楽して暮らしたいという人たちです。そういう人たちは、ほとんどが消えてしまいました。たぶん、「好き」のパワーが弱かったのでしょう。



筋を考えるのが漫画家の生命線です。私ははっきり言ってその努力は惜しみませんでした。いまでも続けている。なにしろ、漫画が好きだからね。私が売れなかった時代でも、原稿料の半分は、漫画の筋を考えるのに役立ちそうな本とか、妖怪の作画のための資料とかを買い込むのに使っていました。食べ物を買う金も満足に残らなかったが、それだけ「好き」の力が強かったのです。



私の職業である漫画家は、売れなければ終わりの冷酷な世界です。なんとか売れるようになった後も、ヒット作を捻り出し、マネーを獲得しないと食っていけない。普通の心臓ではもちません。よほど好きでないと務まりませんよ、ホントに。



ある人が、「水木さんは奇人変人のタイカ(大家)だ」と言ってくれたが、実際、私が長年にわたって古今東西の奇人変人を研究した結果、彼らには幸福な人が多いことがわかった。



我を忘れて没頭できること、本気で夢中になれることなら、どんなにアホなことでもいい。周囲の目や批判を気にして「世間のルール」に合わせようなどとしてはいけない。世間の常識から外れたことをすると、つらい目に遭ったり、恥ずかしい思いをすることもあるだろう。でも、それは甘んじて受ける。忍耐もする。何しろ好きなことをやっているんだから。それが楽しければ、世間との食い違いが起きても慌てず騒がず、ひたすら自分の道を進めていけばいい。ばく進あるのみです。



ベビイ(子供)のころは誰もが好きなことに没頭して生きていたはずだ。人間は好きなこと、すなわち「しないではいられないこと」をするために生まれてきたんです。初心にかえって、仕事に改めて喜びを見出すのもいいし、ずっとやりたかったのに我慢していた趣味をやってみるのもいい。



打込めることを真剣に探そうとすると真面目な人たちには、案外それが見つからないものです。見つけるにはコツがある。簡単なことです。好奇心を大事にすればいい。好奇心が湧き起こったら、とことん熱中してみる。これが近道であります。そうすると、「しないではいられないこと」が姿を現してくる。それでも、姿を現さないなら、ベビイ(子供)のころを思い出してみなさい。無我夢中で遊びや趣味に没頭したころを思い浮かべてみるのです。



私が漫画で食えるようになったのは40歳を超えてから。ベビイ(子供)のころから憧れていた絵で食う暮らしにたどり着き、命の次に大切な眠りすら削って、うんと頭を絞って、漫画に噛り付いてきた。



古今東西の「あの世」のことを調べていて、気づいたことがあります。それは、地獄の様子は場所とか民族とかによって様々異なっていて、それぞれ迫力と現実感に満ちているのに対し、天国の方は世界中ほとんど同じだということです。実に単純なんだ――天国には美しい川が流れ、薄物をまとった美女がいて、美味しそうな食べ物が溢れている。環境が悪くなったのに目をつぶれば、まさに長い不況で暗く沈んだいまの日本こそ天国じゃないですか。それなのに現代人たちは、悲壮な顔をしてあくせく働いています。



※※※※※※※※※※※※※※※



深い人生哲学ですねー!

水木さん、お疲れ様でした。

そして、素敵な生き様を見せていただき、ありがとうございました。

今頃は、妖怪たちと、遊んでいるのかな?(笑)





PS 妖怪を見ると、どうしても、「なんか、ようかい?」と、ダジャレを言いたくなりますね。(笑)







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